主催: 看護薬理学カンファレンス
会議名: 看護薬理学カンファレンス 2021 in 仙台
回次: 3
開催地: 仙台
開催日: 2021/12/11
褥瘡の予防・治療には、褥瘡発生要因への対策が必須である。とくに、骨突出部の圧迫、ずれへの対策は褥瘡予防・治療の基本となる。皮膚排泄ケア認定 看護師(以下、WOCN)へしばしば褥瘡症例に関して、「(患部に)何を塗ればよいですか?何を貼ればよいですか?」という相談がある。その問いにも回答する が、局所への薬剤や創傷被覆材の選択以前にWOCNが褥瘡を目にしてまず瞬時に行うことは二つある。一つは、褥瘡の重症度(緊急性)を見極めるための「創 部のアセスメント」であり、もう一つは、発生要因を究明するための「生活のアセスメント」である。
本日は、在宅療養患者に発生した重症褥瘡に対する褥瘡治療から再発予防 の実例を提示しながら、創部のアセスメントと生活のアセスメント、多職種で役割分担をして取り組む予防ケアの重要性、を述べる。症例の提示当たっては、患 者本人に同意を得た。
【症例】60 代男性。独居。頚髄損傷(C5-6)で対麻痺があり、右坐骨結節部の 感染褥瘡に対し皮弁形成術施行され自宅退院となった。WOCNが褥瘡悪化の原因究明を行ったところ、HALを使用時に着用するハーネスによる外力の影響 が考えられた。退院後も同様のリハビリテーションを切望されたため、ハーネス接触部の簡易体圧測定、実施時間の短縮、皮弁形成部分に褥瘡予防用ドレッ シング材の貼付、ハーネスと坐骨結節部の間に車いす用クッションに使用されているゲルの装着を行い、リハビリテーションは継続した。また多職種カンファレ ンス、訪問診療時の皮弁形成部の超音波検査、WOCNの看護ケア外来での座圧測定とロホクッションの空気調整、車いす調整、ICTを活用したチーム間の 情報共有を行った。以上の介入の結果、HAL 使用を継続したが、術後 18か月 間褥瘡の再発は無く、下肢の筋肉量の増加を認めた。患者を取り巻くさまざまな 職種の多様性を認め、専門性を敬い、それぞれの職種が持てる力を発揮できるように、交渉・調整を図り、チームをコーディネートすることもWOCNの大きな役 割の一つであった。交渉・調整により、患者にとって単なる機能訓練ではなく生きる希望であった HALを用いたリハビリテーションを役割分担した多職種での モニタリングで安全に継続できた。