主催: 看護薬理学カンファレンス
会議名: 看護薬理学カンファレンス 2022 in 福岡
回次: 1
開催地: 福岡
開催日: 2022/03/06
骨盤底の機能には、骨盤内の臓器を支える、正常な畜尿と排尿を行う、正常な排便を行う、腹圧のコントロール、性的な反応などがあります。それらが障害されると尿 失禁、便失禁、子宮脱のような骨盤臓器脱などが起こってきます。本邦では、40 ~50 代で尿失禁の症状を呈する女性は約 30 ~ 40%、出産経験者の 44%は何らかの骨 盤臓器脱の症状を経験すると言われています。中でも、尿失禁の有症率は高く、羞恥 心から受診をためらう女性も鑑みると、データ以上に多くの女性が尿失禁を経験して いると考えられます。また、尿失禁や便失禁は女性の QOL に影響を与えるだけでなく、 自尊心の低下にもつながると言われています。
出産後の長い人生において、女性の QOLや自尊感情を低下させないために、助産 師にはより侵襲の少ない助産ケアが求められます。
先行文献では、バルサルバ法の努責と自然の努責を比較すると、バルサルバ努責 法は産後の尿失禁が有意に多いというエビデンスが出ました。従来、尿失禁は、骨盤 底筋の緩みによって引き起こされるという考え方が一般的でした。しかし、近年では、 インナーユニットと呼ばれる腹腔全体が骨盤底筋に影響を与えているという概念が示 されています。インナーユニットとは、上が横隔膜、横が腹横筋、背中が多裂筋、下 が骨盤底筋群で囲まれた腹腔をいいます。それらは互いに協調しあい密接なかかわ りがあるとされています。従いまして、骨盤底筋だけにフォーカスするのではなく、呼吸(横隔膜)や姿勢(多裂筋)なども考慮し、妊娠・分娩期のケアを行うことが求められ ます。妊娠中は腹部の増大に伴い横隔膜が挙上し動きが制限されます。また、呼吸に も影響を及ぼし浅くなる傾向があります。それをふまえ、妊娠中にどのようなケアが必 要かをお話しさせていただきます。さらに分娩期では、横隔膜と密接な関係がある努 責の方法と多裂筋と密接な関係がある姿勢が骨盤底筋に及ぼす影響について結果を まとめました。まだ課題の多い研究ではありますが、皆様のご意見を伺い、今後の研 究に活かしていきたいと考えています。これまでの研究結果を基に、周産期女性の骨 盤底を守る助産ケアについてお話させていただきます。