主催: 看護薬理学カンファレンス
会議名: 看護薬理学カンファレンス 2024 in 東京
回次: 1
開催地: 東京
開催日: 2024/06/30
わが国における妊娠満 12 週以後の死児の出産数は年間約15,000人と報告され、周産期喪失後の悲嘆は、1年から数年続くと言われている。2022 年度の人 口動態統計(概数)で死産数は自然死産 7,390、人工死産 7,788と報告されている。 流産・死産の体験は非常に多様であり、予想しなかった突然の児の喪失と予期 された喪失とに大別される。予期された喪失の人工死産は、出生前検査の普及 により近年増加している。令和 2 年度厚労省の子ども・子育て支援推進調査研 究「流産や死産を経験した女性に対する心理社会的支援に関する調査研究」で は 618 名の体験者から回答を得ている。「体験者の語り」から回答者の 51.2%は 流産もしくは死産から 6 か月後においても辛さを感じ、32.2%は 1年以上経過後 の現在も辛さが継続していた。
演者は、2004 年から現在まで聖路加国際大学「天使の保護者ルカの会」やグ リーフカウンセリングにおいて、多くの流産・死産・新生児死亡の体験者の地域 支援を続けてきた。周産期喪失に対するグリーフケアの原則は、助産師・保健 師など立場が異なっても基本的には、「ゆっくり話す・沈黙の尊重・守秘義務の 宣明」「死別体験や死児に対する尊敬・過去の体験へのいたわり・労い」「語ら れる体験を丁寧に聴く」「話したくないことは無理に話をさせない」「児への想い、 新生児に関連する事柄を丁寧に聴く」「日常生活上に抱える困難を確認する」「発 言を否定しない」「悲嘆に関する情報提供」「次の妊娠の話題を避けない」「『死』 に関する話題を避けない」「悲嘆作業は、変化していくことを念頭におく(継続ケ アの必要性)」などである。
Evidence-Based Medicine が叫ばれて久しいが、優れた介入が報告されガイ ドラインで推奨される一方、グリーフケアを担う看護職は十分な支援を受けられ ておらず、(Rich 2018、Kalu2018)、グリーフケアに自信がなく、組織からの支 援も不足との報告がある(SANDs 2018)。我が国の病院・診療所に勤務する助 産師 681 名の調査では、84%の助産師が心的外傷体験を経験し、その第一要 因は予測しない急変や子どもの死であり、その後の離職意向は 15%に認められ た(麓・堀内、2015)。すなわち、周産期喪失のケアで看護者は共感疲労に陥り やすく、看護職への特別な支援は焦眉の急を要する。本シンポジウムでは、看護 職に必要な能力、そして共感疲労へのケアを紹介する。