主催: 看護薬理学カンファレンス
会議名: 看護薬理学カンファレンス 2024 in 東京
回次: 1
開催地: 東京
開催日: 2024/06/30
術後痛を適切に管理する必要があるのは、苦痛緩和の目的だけではない。術後痛は呼吸・循環器系合併症、血栓症、廃用やせん妄、慢性疼痛への移行な ど様々な合併症増加に繋がることが明らかになっている。術後早期離床、医療 費の削減、周術期医療の質向上の観点からもその重要性は認識され、近年では 術後疼痛管理へのチーム加算も算定されるようになっている。
オピオイドの種類や投与量、硬膜外麻酔や末梢神経ブロックの併用など、術前 から既に術後を見越した麻酔計画が立てられる。そのためには、術後痛が強い ことが予測される患者背景や要因を事前に把握しておかなければならない。
過去多くの後ろ向き研究が行われ、術後痛が強いもしくは鎮痛薬使用量の 多い患者の予測因子の報告がなされてきた。これらの研究からは、性別、年齢、 術式、緊急手術、術前不安、術前の痛み、精神疾患などいくつかの因子が挙げ られている。特に術式では、整形外科や胸腹部手術で術後痛が強いことはデー タの集積や経験則からも明らかであり、近年では主要な術式毎にエビデンスに 基づいた局所麻酔方法や鎮痛薬の使用が普及してきている。
術前の痛みの感受性に注目した前向き研究も散見される。圧力や熱、電気な どの刺激、静脈路確保時の痛みの強さと術後痛の関連を見ているが、一部の小 規模な研究以外では一定した見解は得られていない。また痛みへの精神・認知 的影響を測定するツールの一つ、Pain Catastrophizing Scale (PCS)を用いた 研究では、術後痛の強さと関連するとの報告も見られる。同じ術式でも、患者に より予想以上に鎮痛薬を要する場合があり、管理に難渋する症例がある。実際 痛みには多くの因子が関連しているが、術前から術後痛を予測出来るツールの 開発には多くの臨床家が期待を寄せている。
演者の発表では、現在の術後疼痛管理の前提となっている術後痛に影響する 因子を文献的に考察していく。