2020 年 13 巻 p. 3-
新美南吉は日本昭和期の有名な児童作家であり、彼の童話は平易な言語や面白い筋立、及びはっきりとした構造などの特徴で読者に人気がある。多くの研究者は彼の作品には戦争に関わることが少ないと認識している。小論では戦争の時局をもとにして創作した「ごんごろ鐘」「貧乏な少年の話」「牛をつないだつばきの木」など六編の作品の再読を通じて、当時の社会背景の影響を受けた作品中における国策宣伝、戦時下での「滅私奉公」の人物像描写などを見出し、戦時の世論環境に相応する作品を創作していた新美南吉の文学の姿と作家の戦争意識を考察した。それほど激烈、露骨ではないが、作家新美南吉の作品には戦争意識が描かれており、彼の戦争支持の観点を抹殺することはできない。