日中言語文化
Online ISSN : 2436-4517
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ISSN-L : 2435-273X
13 巻
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 周 暁靚, 李 婷婷
    2020 年 13 巻 p. 3-
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/30
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    新美南吉は日本昭和期の有名な児童作家であり、彼の童話は平易な言語や面白い筋立、及びはっきりとした構造などの特徴で読者に人気がある。多くの研究者は彼の作品には戦争に関わることが少ないと認識している。小論では戦争の時局をもとにして創作した「ごんごろ鐘」「貧乏な少年の話」「牛をつないだつばきの木」など六編の作品の再読を通じて、当時の社会背景の影響を受けた作品中における国策宣伝、戦時下での「滅私奉公」の人物像描写などを見出し、戦時の世論環境に相応する作品を創作していた新美南吉の文学の姿と作家の戦争意識を考察した。それほど激烈、露骨ではないが、作家新美南吉の作品には戦争意識が描かれており、彼の戦争支持の観点を抹殺することはできない。

  • 馬 叢慧
    2020 年 13 巻 p. 11-
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/30
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    言語と文化には緊密な関係があり、外国語教育においても文化的要素を取り入れることは重要である。本稿では2010年から2020年までに日本で出版された、大学の中国語教育で用いる初級・初中級テキストを研究対象とし、テキスト内の文化についての内容や導入形式、導入視点について比較分析した。テキストには文化的要素が豊富に含まれているが、初級テキストでは、中国語文化に関係する記述は、単語そのものに留まる傾向が強く、文化的な話題にまで深入りするものはほぼ見受けられず、コラムの形で文化面を補足する程度であった。一方の初中級テキストでは、初級より単語の範囲が広く細かいものとなり、さらに本文や会話文、読解文の中で文化的背景を扱うものが多くなり、文化比較や異文化理解の観点で作成されているものも見られた。

  • 呉 丹
    2020 年 13 巻 p. 25-
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/30
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    1894 年、 日清戦争が始まった。日本は初めての対外戦争に挙国一致で臨み、勝利を収めた。国木田独歩は『国民新聞』の特派員として従軍し、『愛弟通信』という従軍記を残した。その中で、国木田独歩は戦死者を見つめ、「戦」は人間を破壊し尽くす「魔物」だという事実を認めた。この視座を獲得した従軍記者は日清戦争を通じて国木田独歩くらいのものだ。この点からすると『愛弟通信』は評価されるべき作品だ。しかし、この従軍記は当時昂揚した国家が個人を優越するナショナリズムから決して自由ではなかった。日本国民とキリスト教徒との立場から、日清戦争を「文明の義戦」として受け入れ、隣国侮蔑の忠君愛国主義から逃れることはできていなかった。

  • 三成 清香
    2020 年 13 巻 p. 33-
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

      ラフカディオ・ハーンは1890年、40歳で来日し、1904年に亡くなるまで日本で過ごした。その間、英語教師として、エッセイストとして、新聞記者として、そして文学者として多くの業績を残した。彼の日本における著作といえば『知られぬ日本の面影』Glimpses of Unfamiliar Japan(1894)から始まり、『怪談』Kwaidan(1904)、『日本―一つの解明』Japan: An Attempt at Interpretation(1904)などがよく知られたところである。特に、日本の古い物語を題材として新たな物語を描き出す「再話活動」は他の外国人がなし得なかったものであり、日本語能力が決して高くはなかったハーンが「聞くこと」、すなわち妻の語りにより物語を構築していった独特な手法も含め現在でも注目されている。そして「耳なし芳一」、「雪女」など、原話を凌ぐ形で受容され続けている作品も少なくない 。  ハーンの残した再話作品は登場人物からストーリー展開まで様々である。そこからは、彼が幼い頃から抱いていた東洋世界への憧れ、幽霊を始めとする死後の世界や未知なる存在などへの強い関心などを読み取ることができる。そして、再話作品全体を見渡すと、女性が物語の中核をなす物語、いわゆる「女性もの」の作品が少なくないことに気づく。その背景には彼が自らを女性崇拝者 であるとし、アメリカ時代から女性についての文章を書き続けたこと、そして来日後も「女性」が一つの大きな関心であり続けたことがある。つまり、「女性」こそが彼の中で一貫したテーマであり続けたと言えるのである。ここで問題となるのはハーンが女性を以て何を描こうとしたのか、ということだ。この点について考えるためには、再話作品だけでなく、その原話にまで踏み込み比較することが必要である。本稿では、ハーンの残した多くの再話作品の中から「鏡と鐘と」Of A Mirror And A Bellを取り上げ、原話「祈ツテ金を得」(『夜窗鬼談』上巻)と比較しながら、構造的な違いと登場人物の描かれ方の異なりについて考察し、ハーンによって描きなおされた物語にどのような意図が含まれているのかを浮き彫りにする。

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