抄録
辺見庸は代表作『自動起床装置』の中で「睡眠」と「覚醒」というメタファーを巧みに用い、現代社会における人間とテクノロジー、自然と人工の間の矛盾と衝突を深く探求し、現代文明の弊害を鋭く暴露した。小説における、「睡眠」と「覚醒」は単なる生理的状態ではなく、現実や自己認識のメタファーでもある。テクノロジーの発展に伴い、人々は覚醒している時間の大部分を外部の事物に奪われ、睡眠が最後の「プライベート領域」となっている。テクストの登場人物や物語の展開は、「目覚め」という、「睡眠」と「覚醒」の臨界点を中心に描かれている。最後の小説の結末は人間の不可欠性と時代の変革における、機械が人間を取って代わる不可逆的な傾向を暗示している。このように、辺見庸の現状への皮肉と無力感が如実に表れ、現代文明に対する批判も浮かび上がってくる。これにより、読者に現代社会における人間の立場について考えさせる役割も果たした。