日大医学雑誌
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原著
当院における常位胎盤早期剥離の臨床的検討と胎児心拍モニター所見
松浦 眞彦東 裕福小林 祐介小川 浩平加藤 隆佐々木 重胤宮川 康司山本 樹生牧本 優美
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2009 年 68 巻 4 号 p. 231-235

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抄録
常位胎盤早期剥離 (早剥) の早期診断と母児の予後改善のために,当院における早剥症例の臨床経過ならびに胎児心拍数モニター所見と新生児予後との関係を検討した. 方法:過去 10 年間において当院で早剥を起こした妊婦から生まれた新生児の予後別に,胎盤剥離面積,DIC スコアおよび胎児心拍数パターンなどを比較検討した.結果:全分娩数 6,430 件に対する早剥症例は 47 件 (0.73%) で, そのうち新生児の予後良好群 28 例 (60%), 予後不良群 7 例 (15%),子宮内胎児死亡 (IUFD) 群 12 例 (25%) であった.IUFD 群で有意に分娩時妊娠週数が早く胎盤剥離面積および DIC スコアが高かった.胎児心拍数モニター所見では Apgar スコアが 7 点以上の全症例に胎児心拍数基線細変動 FHR variability が認められ,またFHR variability が認められれば,新生児の臍帯動脈血 pHは悪くなく胎盤剥離面積も小さかった.結論:早剥により IUFD に至る症例は胎盤剥離面積が大きく,DIC の合併頻度が高いので母体の厳重な管理が必要である.早剥の早期診断と新生児予後の改善には FHR モニターが重要である.FHR モニターは早剥の重症度の推測が可能でFHR variability が認められれば,胎盤剥離が進行しておらず pH も良く新生児予後が良い.
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© 2009 日本大学医学会
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