日大医学雑誌
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総説
ウイルスと自己免疫疾患―原因としての Epstein-Barr ウイルスの可能性
武井 正美野崎 高正猪股 弘武桑名 慶和北村 登白岩 秀隆井汲 菜摘長澤 洋介澤田 滋正矢島 美彩子今留 謙一藤原 成悦
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2012 年 71 巻 5 号 p. 302-310

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抄録

ウイルス感染が自己免疫疾患の発症に関与しうる事は実際の臨床の現場でもしばしば経験する.この稿では自己免疫疾患とウイルスの関与を,関節リウマチとEpstein-Barr ウイルス (EBV) を例にして解説する.EBVは Burkitt リンパ腫,B 細胞リンパ腫,鼻咽頭癌,伝染性単核球症の原因ウイルスとして知られている.EBV はRA 患者で再活性化を起こし,このウイルスに対する液性,細胞性免疫が強くなり,間接的ではあるが関節局所での EBV の存在,分子相同性,多クローン性 B 細胞活性化などにより,RA 病因に関与していると考えられている.我々は,EBV 関連疾患としても知られている IgA腎症末梢白血球から液性免疫の維持や EBV 細胞傷害性T 細胞の誘導に関与する SAP (signaling lymphocytic-activation molecule associated protein) /SH2D1A (Src homology 2 domain-containing protein) をクローニングした.この遺伝子の mRNA 発現が RA 患者末梢 T 細胞で低く,患者体内よりこのウイルスを排除しにくい状況にある事を報告した.さらにはヒト CD34 幹細胞を免疫不全マウスである NOD/Shi-scid/IL-2R γnull (NOG) に移植し,ヒト免役能を有したマウスに EBV を感染させ,直接 RAの関節炎で起こる滑膜の増殖とパンヌス,びらん性関節炎や関節近傍の骨髄浮腫といわれる状態を起す事に成功した.これらの発見は RA の原因として,このウイルスが関与することを強く示唆した.

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© 2012 日本大学医学会
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