日大医学雑誌
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原著
薬剤誘発性糖尿病ラットにおける糖尿病発症早期の膀胱機能障害
五十嵐 匠吉澤 剛佐藤 克彦平方 仁川田 望高橋 悟和田 義之國分 眞一朗
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2012 年 71 巻 5 号 p. 322-328

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抄録

ラットを streptozotocin 誘発糖尿病群 (STZ 群),5%蔗糖溶液飲用による生理的多尿群 (PU 群) に分けて各群の 1 週目,4 週目における膀胱機能を測定しコントロール群 (C 群)と比較検討することで糖尿病発症早期における排尿機能障害を検討した.STZ 群と PU 群は C 群と比較して 1, 4 週目とも 1 回排尿量と膀胱容量が有意に増加したが,STZ 群と PU 群間では有意差はなかった.PU 群の排尿時最大収縮圧 (PP) は尿量の増加に伴い1, 4 週目とも C 群より有意に増加したが,STZ 群では 4 週目で逆に優位な低下を認めた.排尿閾値圧と PP はPU 群と比較し STZ 群では 1 週目ですでに有意に低下し, 4 週目で STZ 群のみ多量の残尿を認め,基礎圧も PU 群と比較して有意な低下を認めた.この結果は,膀胱を支配している自律神経の障害が糖尿病発症後 1 週間程度で発生し,多尿に対する生理的適応ができず早期の排出障害を引き起こすことを示唆した.

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© 2012 日本大学医学会
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