日大医学雑誌
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原著
日本大学医学部附属板橋病院院内検査での習慣流産における染色体異常の実態調査
井上 満大底 睦子小林 孝子山舘 周恒松本 健里村 厚司山本 樹生中山 智祥
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2012 年 71 巻 5 号 p. 329-335

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抄録

習慣流産症例において夫あるいは妻の均衡型転座は 2~5%に認められるが,そのうち相互転座とロバートソン転座では,生児を得る確率に大きな差があるとされ,染色体分析は転帰を予測するにあたって重要な情報となる.日本大学医学部附属板橋病院は院内で染色体検査が実施可能な数少ない施設であり,染色体データを詳細に解析できるという利点がある.今回我々はその利点を生かして 2001 年~2010 年までの 10 年間で,当院臨床検査部にて実施した習慣流産に関連する染色体検査について,変異・転座の出現頻度や臨床的特徴について実態調査した.被検者 401 例 (習慣流産カップルのパートナー (両親) ) 中, 正常変異 12 例, 均衡型転座 9 例を認めた.均衡型転座は相互転座 8 例 (男性 3 例,女性 5 例),ロバートソン転座 1 例 (女性 1 例) を認め,女性で高い傾向であった.均衡型転座で生児が確認されたのはロバートソン転座 1 例であり,相互転座では生児を得る確率が低い可能性がある.保因者に対して遺伝カウンセリングを含む包括的なケアが必要と思われる.

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© 2012 日本大学医学会
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