日大医学雑誌
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原著
当院における凍結精子を用いた生殖補助医療の取り組み
林 忠佑松本 香織加藤 恵利奈市川 剛千島 史尚高橋 英幹新屋 芳里春日 晃子山本 樹生
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キーワード: 凍結精子, 生殖補助医療
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2014 年 73 巻 3 号 p. 150-153

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抄録
生殖補助医療の発展は著しく,世界中で多くのカップルが生殖補助医療の恩恵を受けている.近年,生殖可能年齢の担癌患者の妊孕性温存が注目されており,未婚や今後挙児を希望する癌患者の妊孕性温存のためには配偶子の凍結保存が必要となる.上記を踏まえ,地域がん診療連携拠点病院としての当院の責務より,男性担癌患者の治療後のQuality of life(QOL) の向上を目指し,その前段階として凍結精子を用いた生殖補助医療を2 例行い,良好な成績を得たので報告する.夫が単身赴任のために採卵当日に精液を準備できない2 組の夫婦を対象とした.精子凍結の方法としては,連続密度勾配遠心法で洗浄した精子懸濁液を液体窒素蒸気凍結法で緩慢凍結した.ART (assisted reproductive technology) に際しては,調節卵巣刺激後に採卵し,凍結精子を融解したのち,媒精した.2 例ともに良好な初期胚および胚盤胞を得て胚を凍結保存することが可能であった.また2 例とも融解胚盤胞移植を行い,妊娠を確認しており,現在も妊娠継続中である.当院でも凍結精子技術を用いた生殖補助医療が可能であることを示した.これを踏まえ,担癌患者の妊孕性の温存に関し,まずは男性から当院でも実施体制を整えていきたい.
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© 2014 日本大学医学会
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