抄録
ハサミの使い方における手の巧緻性は,握力や母指の安定と関係がある。母指中手指節(MP)関節過伸展症では,母指の屈筋が働かず,保持する握力が十分に発揮されないことがある。また,過伸展状態では随意に基節を動かしにくく,母指が不安定となることがある。
一方,医学領域では,先天性の母指MP関節過伸展症重度罹患幼児の症例が報告されている。そこで,幼児のハサミの使用状況を観察したところ,軽度の母指MP関節過伸展症が疑われる幼児を認めた。そして,罹患幼児3名の母指の状況を運動方向や関節の動き,力点場所の観点から分析し,軽度罹患幼児がハサミを使用する際の援助・指導法の導出を試みた。
その結果,ハサミの母指側の指穴が基節骨の付け根まで到達しないサイズであること,ハサミ使用時はIP関節を屈曲するよう指導することを見出した。