抄録
膵体部癌は腹腔動脈や総肝動脈などの重要な血管に近接しており,その直接浸潤で手術非適応とされることが多い.腹腔動脈浸潤症例については,術前に総肝動脈を塞栓し,側副血行路の発達により肝血流を維持して腹腔動脈幹合併切除を伴った尾側膵切除術を行うことで切除可能な症例がある.症例は68 歳,男性.膵体尾部癌の診断であった.術前化学療法を施行し,総肝動脈を塞栓し,膵切除を行った.術中に肝血流障害を認め,固有肝動脈-空腸動脈バイパスにより回避し得た症例である.このような症例は,われわれは経験がなく,文献的考察を加え報告する.