[背景]うつ病は世界的な疾病負荷の⼤きな部分を占めるが、既存の治療では疾病負荷の半分以下しか軽減できないとされ、修正可能な危険因⼦への関⼼が⾼まっている。栄養精神医学のなかでも、超加⼯⾷品(UPF)の摂取と抑うつとの関連が注⽬されている。UPF はNOVA ⾷品分類の第4 群に相当し、⼯業的に製造され家庭の調理では⽤いない添加物を含み、世界的に摂取が増加している。
[⽬的]本稿は、UPF摂取と抑うつ症状の関連について、病態⽣理学的背景・想定される分⼦機序・臨床研究のエビデンス・精神科臨床への実践的⽰唆を整理し、観察研究の相関と介⼊研究の因果を厳密に区別したうえで、現時点での到達点と限界を明確にすることを⽬的とする。
[内容]観察研究のメタ解析では、UPF ⾼摂取群で抑うつ症状のオッズ⽐1.44、不安症状で1.4 8、両者を合わせた⼀般精神症状で1.53 と有意な関連が⽰され、前向き研究の統合では抑うつ発症のハザード⽐は1.22 であった。アンブレラレビューでは、⼀般精神疾患との関連が「確信できる」、抑うつ発症が「極めて⽰唆的」と分類された。60 か国の⼤規模調査でも⽤量依存的な関連が⽰唆されている。想定される機序として、低⾷物繊維・⾼添加物による腸内細菌叢の変調と腸管バリアの破綻、全⾝性の低度炎症、HPA 軸の調節不全、乳化剤や⼈⼯⽢味料の作⽤が挙げられるが、その多くは動物モデルや横断研究に基づき、ヒトでの因果は確⽴していない。横断的神経画像研究では、UPF摂取量が中脳辺縁系の灰⽩質容積の低下と関連することも報告されている。⽇本⼈集団の前向きエビデンスは乏しく、⼥性で関連がより明確という性差も報告されている。
[結論]UPF摂取と抑うつの関連は観察研究として頑健だが、逆因果や交絡を排除できず、因果は未確⽴である。⾷事改善は標準治療の代替ではなく併⽤しうる現実的な選択肢であり、⾷事アセスメントの導⼊、多職種連携、公衆衛⽣レベルでの⾷環境改善が重要な⽅向性となる。