栄養精神医学
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総説
統合失調症における腸管バリア機能障害と栄養素利⽤の変容 —低度炎症・腸内細菌叢・経⼝薬物動態から考える栄養精神医学的レビュー—
奥平 智之
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2026 年 2 巻 1 号 p. 154-168

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抄録

[背景]統合失調症の病態は、中枢のモノアミン不均衡を中⼼とする枠組みを超え、低度の全⾝性炎症や腸脳相関の異常を基盤とする免疫・代謝性の側⾯が注⽬されている。少なくとも⼀部の患者では、腸管透過性亢進や腸管由来の免疫活性化を⽰唆する所⾒が報告される⼀⽅、バリアの漏出が直ちに栄養素や経⼝薬の吸収不良を意味するとの過度の⼀般化や、相関と因果の混同も⽣じている。

[⽬的]本稿は、統合失調症における腸管バリア機能障害のエビデンスと限界を、関連バイオマーカーを通して批判的に整理する。その上で、粘膜の低度炎症・ディスバイオシス・消化管運動異常が栄養素利⽤と向精神薬の薬物動態に及ぼす影響を機序的に論じ、栄養精神医学的アプローチの臨床的意義と多職種での実践的ノウハウを提⽰することを⽬的とする。

[内容]ゾヌリン、LBP、LPS、I-FABP、ラクツロース/マンニトール⽐などの指標は、⼩腸粘膜上⽪傷害・内毒素⾎症・肝急性期応答という異なる過程を反映し、喫煙・罹病ステージ・代謝症候群に交絡される。傍細胞経路の漏出は経細胞経路の輸送体障害と同義ではないが、炎症性サイトカインは栄養素トランスポーターやCYP 代謝酵素を抑制し、ディスバイオシスはタンパク発酵や神経伝達物質前駆体の代謝を変容させうる。酪酸産⽣菌の減少、Candida 優位の真菌叢、糞便移植による動物での再現は因果を⽰唆するが証明はしておらず、抗精神病薬⾃体も微⽣物叢を再編するため因果推定は容易でない。あわせて、フェリチンやトランスフェリン飽和度などの⾎液検査所⾒を基準範囲内の潜在的不⾜まで踏み込んで読み解く具体的な解釈の視点と実例を、多職種での実践とともに⽰す。

[結論]腸管バリア機能障害は、統合失調症の免疫炎症性サブグループにおいて⽐較的⼀貫して報告されている。しかし、これを臨床的な吸収不良と同⼀視することはできず、両者を結び付ける直接的なエビデンスは⼗分ではない。栄養素の⽣物学的利⽤能や向精神薬の薬物動態を、バリア機能と関連づけて直接測定した研究はなお存在しない。腸を標的とする栄養精神医学的介⼊は標準治療を補完しうるが代替はせず、その有効性は今後の縦断研究・介⼊研究による検証を要する。

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