ヒトの脳の発達におけるエネルギー代謝の特異性について、周産期の臨床データと分⼦⽣物学的知⾒を基に新しい視点を提案する。筆者らが測定した胎児・新⽣児の臍帯⾎と絨⽑間腔⾎のケトン体濃度は、成⼈の基準値を⼤きく上回る⾼値(数百〜数千µmol/L)を⽰した。これは、胎児や新⽣児がグルコースだけでなく、ケトン体も主要なエネルギー源および脳の構造を作るための脂質合成材料として利⽤していることを⽰唆している。β-ヒドロキシ酪酸が単なる代替燃料ではなく、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害やNLRP3 インフラマソームの抑制を通じて、神経細胞の抗炎症作⽤、抗酸化作⽤、そしてシナプスの可塑性維持に寄与する「シグナル伝達物質」である。現代の過剰なグルコース依存モデルは、この「⽣理的ケトーシス」を妨げ、神経発達障害や将来の精神疾患リスクを⾼める可能性がある。周産期の代謝環境が精神的なレジリエンスにどのように影響するかというDOHaD(発達に基づく健康の決定因⼦)説の観点から、栄養精神医学の原点を再考する。