精神症状の発症および遷延には、低度慢性炎症が関与することが近年明らかになりつつある。炎症性サイトカインは⾎⾏性経路に加え、求⼼性迷⾛神経をはじめとする神経性経路を介して中枢へ情報を伝達し、神経炎症、⾃律神経調節異常、神経伝達物質代謝の変調を惹起する。神経伝達物質仮説に基づく標準的な薬物療法のみでは⼗分な改善が得られない症例も少なくない中、精神症状を全⾝性炎症の中枢神経系への波及として再解釈する視点が求められている。本稿では、慢性炎症の原因因⼦を16 項⽬に体系化した『インフラマトリックス16(Inflammatrix 16)』の概念を提⽰し、各項⽬の病態機序と精神症状およびメンタルパフォーマンス低下との関連を解説する。さらに、個々の炎症⼊⼒因⼦を可視化し、⾷事内容の改善や栄養素の適正化を通じた栄養介⼊を薬物療法と補完する治療戦略として位置づけ、栄養精神医学における臨床的意義を論じる。