2026 年 2 巻 1 号 p. 221-226
眼球は、中枢神経系の⼀部が体表に露出し、微⼩循環障害や酸化ストレスなど全⾝の代謝異常を⾮侵襲的に観察しうる唯⼀の器官である。糖尿病性網膜症の本態は平均⾎糖値よりも「⾎糖変動(グルコーススパイク)」によるミトコンドリアでの活性酸素種産⽣と⾎管損傷にあり、⾷事療法による厳格な変動抑制が不可⽋である。また、緑内障の多くは眼圧異常よりも視神経の虚⾎および⾎管内⽪機能不全に起因するため、アルギニン等を⽤いた⼀酸化窒素(NO)産⽣による⾎流改善が奏功する。さらに、加齢⻩斑変性や⽩内障に対する抗酸化・抗糖化(AGEs 抑制)アプローチや、網膜⾊素変性への抗炎症治療も詳述する。これら網膜⾎管と視神経を守る栄養医学的戦略は、同様の組織学的背景を持つ⾎液脳関⾨(BBB)およびニューロンの保護と直結しており、⾒⽅を変えると、眼科と精神科が共有すべき次世代の統合的治療指針とも⾔える。そこで本稿では、眼科領域における先駆的な栄養学的介⼊が、精神科臨床における脳保護戦略にいかなる⽰唆を与えるかを論じる。