[背景]認知症では中核症状に加え、アパシーや⾷欲低下などの⾏動⼼理症状が⽣活機能を⼤きく損なう。⾼齢者では味覚異常や微量ミネラル不⾜が併存しやすく、栄養精神医学の観点からの評価が重要である。
[症例]80 歳代⼥性、アルツハイマー型認知症。橋右側脳梗塞後の尿路感染症治療を契機に、⾷思不振および意欲低下が増悪した。初診時、⾝⻑145 cm、体重44 kg、体格指数(BMI)21、M ini-Mental State Examination(MMSE)5/30 点、⾎清アルブミン2.8 g/dL、⾎清亜鉛65 μg/dL と低亜鉛⾎症を認めた。味覚異常を背景とした⾷思不振を疑い、抗認知症薬の導⼊に加えてポラプレジンク150 mg/⽇を追加したところ、2 週間で⾷事摂取量は0〜2 割から10 割へ改善し、活気および表情の回復を認めた。
[結論]認知症患者に⾷思不振とアパシーを認める場合、味覚症状と⾎清亜鉛などの栄養関連指標を評価し、亜鉛補充を含む介⼊を検討することが⽰唆された。栄養精神医学的介⼊はポリファーマシー抑制にも寄与し得る実践的な治療選択肢である。