ライチョウは、1980年代から2000年代初頭にかけてその生息数が約3,000羽から1,700羽にまで減少したことを受けて、環境省が定めるレッドリストのランクがⅡ類からIB類にアップした動物である。2012年には保護増殖事業計画が策定され、環境省が中心となってライチョウの保全が進められることとなった。まず2014年に保護増殖実施計画の第一期が策定され、生息地で保全を行う生息域内保全と、動物園などで飼育して増やす生息域外保全を並行して実施することが決まった。翌2015年に本格的に取り組みが始まり、2019年まで5年間の実施で大きな成果をあげることができたと言えるだろう。現在第二期実施計画を策定中であり、2020年2月27日に開かれたライチョウ保護増殖検討会にて、2020年度より、レッドリストのランクダウンを目指した、新たな段階の取り組みが進められることが決まった。ここではライチョウ保護増殖事業におけるこれまでの取り組みと、今後の展望について述べたい。ちなみに、域内保全の南アルプスと中央アルプスにおける取り組み及び域外保全についてはそれぞれ小林氏及び秋葉氏が担当しているので概要のみとし、ここでは特に火打山での取り組みを紹介する。