市立大町山岳博物館研究紀要
Online ISSN : 2432-1680
Print ISSN : 2423-9305
成スバールバルライチョウの消化管内容物滞留時間測定
土田 さやか牛田 一成村田 浩一宮野 典夫
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2020 年 5 巻 p. 19-24

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抄録

絶滅が危惧されるニホンライチョウの保全のために,生息域内と生息域外の保護増殖事業が進められている.このうち生息域外保全事業では,ニホンライチョウの飼育繁殖が試みられているが,参考にしているトロムソ大学の飼育マニュアルには改善すべき点の多いことが指摘されている.草食のライチョウ類では,下部消化管における飼料発酵がエネルギー獲得機構として重要である.域外保全下のニホンライチョウの適正な飼料内容と給餌頻度など給与法を考案するには,下部消化管とくに盲腸における飼料の滞留時間を測定する必要がある.本研究では,大町山岳博物館で飼育中の成スバールバルライチョウをもちいて消化管内容物の滞留時間を求め,下部消化管における内容物の移動機構を推測した.腸糞として排出される固形部分の摂取から排泄までの時間は,2~4 時間で,不消化物は早急に排出された.盲腸糞として排出される泥状画分は,結腸近位部で内容物が固液分離されて液状部が盲腸に逆流させられ,そのまま盲腸に滞留する.この画分は8~12 時間の滞留時間を示し,4~10 時間,盲腸で発酵作用を受けることがわかった.また,滞留時間には季節差が認められ夏季の方が固形部の滞留時間が短くなる傾向が見られた.

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© 2020 本論文著者
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