市立大町山岳博物館研究紀要
Online ISSN : 2432-1680
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爺ヶ岳タネマキジイサンの雪形伝承と山名由来の関係
関 悟志
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2020 年 5 巻 p. 69-114

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抄録
伝承を伴ういわゆる伝統的な雪形は、山の残雪模様を人物・動物・植物・文字・道具等の形象に見立て、農耕・狩猟・採集・漁労等の生業とかかわりを持ちながら現代に伝わってきたとされる。 北アルプスの爺ヶ岳は雪形にちなむ山名を冠す山岳のひとつとして知られるが、伝承の視点から捉えた雪形に関する個別研究や、雪形伝承との関係に焦点を当てた爺ヶ岳の山名考証は管見では過去に例を見ない。そこで爺ヶ岳に出現するタネマキジイサンの雪形伝承と山名由来に関し、報告等の文献資料や絵図・地図等の図像資料という史資料における記録を概括して変遷をたどり、雪形伝承と山名由来、さらに両者の関係について考察を試みた。 その結果、爺ヶ岳タネマキジイサンの雪形伝承は明治期以降に報告され、出現場所が異なる北と南の雪形2種が主に認識され、稲作・畑作の農事適期を伝える自然暦としての伝承等を一部に伴うものの、具体的な農作業工程の時期を判断する目安として利用されたという明確な伝承は手元の文献資料から確認することができなかった。また、爺ヶ岳を構成する北峰・中央峰・南峰の3峰は、信州側の山麓地域では近世から明治期までを中心に各峰個別の山名が付され、南峰の名称が祖父ヶ嶽等と推定されることから、爺ヶ岳という現山名は南峰単体を示す呼称に起因すると考えられる。さらに、山麓の一部住民は元来、南の雪形の方を認識していた可能性が示唆されることから、爺ヶ岳の山名由来となった雪形は南峰に出現する南のタネマキジイサンであったとも推察される。
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© 2020 本論文著者
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