2001 年 16 巻 1 号 p. 89-102
言説分析を経験的な社会学の一手法として鍛えるために必要な、基本的な論点を提出する。第一に、言説分析は自らの外部には出られないが、だからといって分析が不可能になるわけではない。第二に、言説分析は言説空間の全体性を仮想する。第三に、言説分析は、言説(が存在すること)の客観性を前提としつつ、社会的事実としての言説空間の成立・変容過程を分析する。そこでは、「あの言説が語られず、この言説が語られるのはなぜか」という問いが中心を占める。第四に、言説分析は、「誰が語るか」以上に、「誰が語っても似たような言説になるのはなぜか」を問うものである。