2009 年 24 巻 2 号 p. 301-316
本稿の目的は,平等主義やマクシミン主義や競争主義など,他者配慮にかんする豊かな意味内容をもった二者関係における評価関数を,公理論的に導くことにある.この評価関数は,自他の利得差の絶対値を含むやや複雑な形をしているが,形式的かつ単純な仮定から導かれる.具体的にはこれらの仮定は,(1)自他の利得が比較できる,(2)利得と評価のそれぞれの(選好)順序が正アフィン変換によっても変わらない,というものである.これらの仮定は平等的な性質をもっていないようにみえるが,演繹的に導出される評価関数は平等主義的なものを含むのである.