理論と方法
Online ISSN : 1881-6495
Print ISSN : 0913-1442
ISSN-L : 0913-1442
特集 コモンズ問題の現代的展開—社会的ジレンマ問題をこえて—
外部者の導入による過少利用資源の持続的管理
―ロジスティック方程式の拡張―
堀内 史朗
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 29 巻 2 号 p. 277-291

詳細
抄録

 人々が資源を過剰に利用するために共有地が崩壊してしまう「共有地の悲劇」は,社会的ジレンマ問題の典型例としてよく知られている.共有地の悲劇を回避するためには,資源の利用者を地元民に制限し,利用者同士が相互監視をおこなうような社会設計が必要とされてきた.そのいっぽう,人々が資源を過少にしか利用しないことで当事者以外に負の外部性を生じてしまう,新たな「共有地の悲劇」が,特に日本の山林などで問題になっている.利用者を制限するという方法では,この共有地の悲劇を回避することは不可能である.そこで本稿は,利用者の制限を解き放ち,外部から利用者をその環境へ招くことで資源を持続的に維持する手法の可能性を,ロジスティック方程式を拡張した微分方程式モデルによって分析した.その結果,利用者を外部から招く手法は,過剰利用が原因で環境を消耗させるリスクがあるが,環境に空間的な広がりがあるならば,そのリスクを低減できることが分かった.

著者関連情報
© 2014 数理社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top