理論と方法
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特集 社会規範への数理社会学アプローチ
寛容する連帯の規範的構成
三隅 一人
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2017 年 32 巻 2 号 p. 257-270

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抄録

 本稿は連帯のメカニズムを寛容と規範の観点からフォーマルに論じる.連帯を,関係基盤シンボルを介した<われわれ関係>と定義し,どのような関係基盤シンボルによる連帯をよしとするかを示す信念をブール式で定式化する.寛容する連帯は普遍主義と相対主義の両立という矛盾を抱えるが,寛容を規範実効化の制限としてみると,そこに至る道標を村上陽一郎の「より摩擦の少ないと思われる解」LCSに求めることができる.また,リベラル・ナショナリズム(リベラル普遍主義)等の理念をメタ信念としてブール式で表し,その受容をめぐる寛容さをLCSに準拠して考察できる.これらの分析から,第一に,LCSを基準として信念の寛容さを析出し,寛容な信念が行為主体の立ち位置によって異なることを示した上で,その使い分けが寛容する連帯の重要なヒントになることを論じる.第二に,メタ信念の受容の分析から,リベラル普遍主義はLCSに照らして明らかに寛容とはいえないが,適度の寛容さをもちつつ理念的に整合する点で寛容する連帯に適合することを論じる.以上により,規範の働きを考慮しつつ連帯のメカニズムを解明するための,関係認識論的なマイクロ・マクロ・リンクの可能性を示す.

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© 2017 数理社会学会
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