理論と方法
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特集 意図せざる結果
公式組織・官僚制における『意図せざる結果』の問題
─数理・計量的研究の展望─
木村 邦博
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1989 年 4 巻 1 号 p. 53-72

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抄録
 公式組織・官僚制における「意図せざる結果」に関する数理・計量的研究を概観し、この種の研究の発展の方向を示唆する。まず、官僚制の逆機能の研究に対するフォーマリゼーションの試みを取り上げ、フォーマリゼーションの戦略に2つのタイプがあることを示す。ひとつは、「Aが大きければBも大きい」という命題の積み重ねによって理論を構築しようとするものである。もうひとつは、合理的行為者モデルを用いて「意図せざる結果」の生じるメカニズムを明らかにしようとするものである。組織における「意図せざる結果」の研究のうち、官僚制の逆機能の研究以外のものでも、これら2つの戦略が用いられていることを示す。さらに、新たなタイプのフォーマリゼーションの可能性を開いたものとして、行為者を「問題解決者」としてとらえる「ゴミ箱モデル」を紹介する。「意図せざる結果」が生じるプロセスの解明に一定の成功を収めてきたのは「合理的行為者モデル」を用いたアプローチであるが、今後はこれに加えて問題解決者モデルの展開が期待される。
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© 1989 数理社会学会
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