理論と方法
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論文
抑止理論およびラベリング理論の検証
─LISRELを用いて─
津富 宏
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1990 年 5 巻 2 号 p. 2_73-2_90

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抄録

 逸脱の社会学における根本的な争点のひとつは、法的制裁の逸脱行為に対する影響、すなわち、刑罰は、特別予防の過程を通じて逸脱を抑止するのか、あるいは、逸脱深化の過程を通じて逸脱を拡大するのかという問いである。本研究は、アメリカ、サウスカロライナ州の一都市の高校生のデータを用い、逮捕がそれ以降の非行行動にもたらす効果がどのように抑止過程及びラベリング過程に媒介されるかを検討した。本研究では、媒介過程を明確にモデリングすることにより、1)刑罰と犯罪行動を結びつける媒介過程の無視、2)重要な媒介変数の見落とし、3)時間的順序と矛盾した因果順序の設定、4)法的制裁の犯罪行動に対する影響が制裁をうける個々人の特質に条件付けられている可能性の不十分な取扱いといった、過去の研究の手法上の欠点がのりこえられた。
 測定誤差の補正、パネルモデルの推定、本研究に適した仮説検証を可能とするJoreskogとSorbomのLISREL-VIを用い、共分散構造モデルを推定した結果、逮捕された者は、非行行動に対する親からの叱責を予期しなくなり、非行的な者との接触を増すため、より多くの非行を行うことが見いだされた。この結果は、特別予防の仮説を否定し、逸脱深化の仮説を支持するものである。

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© 1990 数理社会学会
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