理論と方法
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特集 フォーマル・セオリー
階層認知と階層意識
─階層認知の数理モデル─
白倉 幸男与謝野 有紀
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1991 年 6 巻 2 号 p. 2_37-2_54

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抄録

 本研究では、Fararoの公理をもとに、階層認知と階層帰属意識の問題について数学的な定式化を行ない、理論展開する。ここでは、次の点を明らかにする。
(1) 階層イメージの形成において、各人は自己の属するイメージ階層をもっとも少数派だと認知する。そして、自己の属する階層から離れるほど多数派になっていくと認知する。(2) また、次元もしくはランク数が増加するにつれて、ますます自己を少数派だと認知する。(3) イメージ階層分布は対称で上に凸である。(4) 階層システムにおいて次元数が増加するほど、階層帰属意識はより中レベルに集中する。(5) Fararoの公理を拡張し、スキャニング過程を一般化することによって、イメージ階層および客観階層における順位の一般式を明らかにする。(6) イメージ階層の順序の非保持性を「逆転現象」としてとらえ、その数理的なメカニズムを明らかにする。(7) そして、客観階層と主観的なイメージの間の乖離から生じる差異化と同質化のパラドキシカルな関係を明らかにする。

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© 1991 数理社会学会
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