脳と発達
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シンポジウムⅦ:小児神経疾患とエピジェネティクス
エピジェネティクスのオーバービュー
久保田 健夫伏木 信次
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2009 年 41 巻 3 号 p. 203-207

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抄録
 エピジェネティクスとはDNAのメチル化修飾等を基盤とする遺伝子発現調節機構のことである. エピジェネティクスが関わる疾患の最初の報告は小児神経疾患であった. DNAのメチル化, 蛋白質によるメチル化の認識, クロマチンの構造変化, 発現抑制パターンの確立といった理解が進み, Angelman, Prader-Willi, Rettなどの小児神経分野の症候群がこれらのステップの異常に起因していることが判明した. 最近, 胎生期の栄養や生後の子育てといった環境でエピジェネティクスが変化することが明らかにされ, エピジェネティックな異常は種々の後天性疾患でも生じていることが示唆されはじめた. エピジェネティクスは可逆性を有する遺伝子調節メカニズムであり, モデルマウスを用いたRett症候群研究では生後の治療で神経障害が完治したとの報告もある. エピジェネティクス疾患は可逆性に根ざした治療が可能であることから, 種々の疾患におけるエピジェネティクス病態の解明が期待される.
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© 2009 一般社団法人日本小児神経学会
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