脳と発達
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会長講演
遺伝性神経疾患の神経変性機構の解明と治療法の開発
—Niemann-Pick病C型について—
大野 耕策
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2010 年 42 巻 2 号 p. 92-102

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抄録

 Niemann-Pick病C型 (NPC) は小児期の神経変性を特徴とするまれな疾患である. 約20年間この疾患の研究に細々とかかわってきた. この間, NPCの遺伝子, 蓄積脂質, 神経病理, 細胞機能異常などの解明や治療法の開発に大きな進歩があった. 会長講演では, 鳥取大学とその共同研究グループが行った研究成果を中心に報告した.
 これまで, 全く治療法がない疾患であったが, ここ数年, 蓄積脂質を減少させ, 神経症状を改善し, モデルマウスの寿命を延長させる複数の方法が開発された. 2009年, 欧米ではmiglustatがNiemann-Pick病の神経症状に有効な薬剤として承認され, 米ではシクロデキストリンが一部の患者さんにFDAから「人道的使用」として使用が承認されている. 日本でも早期に厚生労働省の承認が得られるような努力が求められている.

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© 2010 一般社団法人日本小児神経学会
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