脳と発達
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症例報告
免疫グロブリン治療が奏効したてんかん性脳症例
元木 崇裕中川 栄二小一原 玲子高橋 幸利竹下 絵里石山 昭彦齋藤 貴志小牧 宏文須貝 研司佐々木 征行
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2016 年 48 巻 4 号 p. 277-281

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抄録
 てんかん発症までの発達は問題なかった. 6歳9カ月頃より全般性強直間代発作, ミオクローヌス発作を認め, てんかんと診断され抗てんかん薬が開始された. 7歳2カ月時, 長時間脳波で明らかな発作時脳波異常を認めず偽発作の可能性も考慮され一旦抗てんかん薬が中止された. 発作は改善せず, 次第に歩行困難となり発語が減少し食事や排泄に介助が必要となった. 半年間で知能指数 (IQ) が92から52まで低下した. 7歳8カ月時, 当院入院時には, 全般性強直間代発作やミオクローヌス発作が連日群発していた. 各種抗てんかん薬に対し難治であり, 脳波検査で両側性てんかん性異常波と背景波の徐波化を認め, てんかん性脳症と診断した. 血中/髄液中の抗グルタミン酸受容体抗体 (anti-glutamate receptor antibody : 抗GluR抗体) の上昇を認め自己免疫の関与を疑った. 免疫グロブリン投与を開始し, 1カ月で運動面, 認知面共に改善傾向となった. 2~3カ月毎に免疫グロブリン投与を行い, 2クール終了後に発作は消失し, 3クール終了後にてんかん性異常波はほぼ消失した. IQも63まで改善した. 6クール終了した8歳8カ月時点で日常生活動作は自立し, 発達面もほぼ発症前の状態まで改善した. 発作は極短時間の意識減損発作が週1回起こるのみである. 免疫グロブリンが著効したことより自己免疫の関与が強く示唆された. てんかん発作が亜急性に増悪し, 発達退行を認める場合には原因として自己免疫が関連している可能性があり, 免疫グロブリン投与を考慮すべきである.
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© 2016 一般社団法人日本小児神経学会
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