抄録
【目的】小児期発症のてんかんでは, 成人期以降も治療が必要な場合がある. 成人への移行における患者側の希望や必要を調査し, 適切なてんかん診療体制を築くための課題を検討した. 【方法】12歳以上の中学生から18歳以下のてんかんの子どもを持つ保護者を対象にアンケート用紙を配布し, 郵送で回収した. 【結果】176例配布し, 有効回答79例を分析した (回収率45%). 将来のてんかん診療は59%が小児科を継続希望し, その理由は「今の治療を信頼している」が多かった. また, 将来の転科には, 73%が不安を感じており, その理由は「引き継ぎがきちんとされるのかが心配」が多かった. 主治医から将来のてんかん診療について, 他科への転科を勧められた者はいなかったが, 19%が現在の小児科でのてんかん診療に違和感を持っていた. 不安がある群は不安がない群と比較し, 一般校在籍が少なく, 年単位以上の発作を認める症例や小児科での診療継続を望む症例が多かった. 【結論】約7割の保護者が将来のてんかん診療の転科に不安を感じていた. 小児期を経て成人期にも治療が必要となる様々な背景をもつてんかん患者が希望して選択できるてんかん診療体制を構築するためには, 小児科医と内科医, 脳神経外科医, 精神科医, てんかん診療科が各科協力してみていく連携の整備が鍵となる.