脳と発達
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原著論文
集中管理後に神経学的所見を残す小児の発熱に伴う難治性けいれん重積状態の初療時の臨床的特徴
佐々木 香織丸山 あずさ永瀬 裕朗
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2017 年 49 巻 5 号 p. 327-331

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抄録

 【目的】私たちは, 中枢神経感染症によらない熱性の小児難治性けいれん重積に対し, 早期にtargeted temperature management (TTM) とbarbiturate coma therapy (BCT) を行い転帰を改善できることを以前に報告したが, 同様の管理でも治療前になかった神経学的所見を残す場合がある. 本研究は, そのような症例の初療時の臨床的特徴を明らかにする目的に行った. 【方法】2010~2015年に加古川東市民病院に15分以上の発熱に伴うけいれん, 意識障害で来院した108例中, TTM・BCTを早期に導入した難治性けいれん重積5症例の初療時の臨床的特徴を治療後の神経学的所見の有無で比較した. 【結果】神経学的所見残存例2例は来院時けいれんは頓挫していたが意識障害が遷延し, diazepam投与後midazolam投与までに長時間要した. 2例とも意識障害, 瞳孔散大が継続し, non-convulsivestatus epilepticus (NCSE) の持続が疑われた. 1例は二相性脳症の診断基準を満たし退院後右片麻痺が残存, もう1例は退院後てんかんを発症した. 【結論】中枢神経感染症によらない熱性の難治性けいれん重積症例で, 初療時に瞳孔散大を伴い意識障害が遷延した例において神経学的所見が残存した. けいれん重積の予後は一般的に原疾患に依存するとされるが, NCSEの遷延, 追加治療の遅れが予後に関連した可能性もあると考えられた.

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© 2017 一般社団法人日本小児神経学会
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