2019 年 51 巻 1 号 p. 10-14
【目的】点頭てんかん症例の発症から治療導入までの期間 (treatment lag ; TL) が1か月を超える場合を治療遅延として, その割合と要因の年代変化を検討する. 【方法】1997~2017年の間, 2歳以下でスパズムを発症した点頭てんかん症例を対象とした. 発症初期の経過が不明な症例と在院中発症例を除外した. 診療録からTL, 発症から診断・治療導入日までの経緯を後方視的に調査し, TL>1か月となる治療遅延要因を受診側要因と診療側要因に分類した. 発症日で5年毎に4期に分け, TL, 治療遅延とその要因の年代変化を検討した. 【結果】対象は185例で, TLの中央値は0.7 (0~13) か月, TL>1か月は73例 (39.5%) であった. 治療遅延要因は受診側要因のみが68.5%, 診療側要因のみが21.9%, 両要因の併存が9.6%だった. 年代変化ではTL, TL>1か月の比率に有意な変化はなかったが, 第3期以降はTL>4か月の症例はいなかった. 治療遅延要因は, 第2期以降は受診側要因が約70%を占めた. 【結論】点頭てんかんにおいてTL>4か月の症例は最近10年間で認めなくなったが, TL>1か月の割合に変化はなかった. 治療遅延要因は, 診療側要因の比率が減少, 相対的に受診側要因の比率が増加し約70%を占めた. 治療遅延をなくすためには, 乳幼児保育に関わる人の点頭てんかんに対する認識を高める必要があると考えられた.