脳と発達
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症例報告
「ありがとう作戦ゲーム」 により母親の子どもへの態度が変容し改善した発達障害の1例
小沢 浩
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2019 年 51 巻 5 号 p. 314-317

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抄録

 注意欠如・多動症 (以下, ADHD) の診断治療ガイドライン第4版では, 治療・支援における環境調整, 心理社会的治療の位置づけが明確化された. また自閉スペクトラム症 (以下, ASD) においては, 保護者は子育てにストレスを抱えやすく, 肯定的な介入を促す支援が有効である. 我々は, 外来で行える心理社会学的治療として, 「行動処方」 を提唱している. 今回その一つである, 「ありがとう作戦ゲーム」 がADHD, ASDの症例に有効であったので報告する. 症例は6歳男児. 主訴は落ち着きない. 母親は, 子育てに悩み, 叩いていたために子ども家庭支援センターが指導した. 本児をほめるために 「ありがとう作戦ゲーム」 を行った. 「ありがとう作戦ゲーム」 とは, ほめることを具体的に提示する方法であり, 「ありがとう」 と言おうと思ったら+1点, 言えたら+3点, 3回言えたら+5点と 「ありがとう」 と言うことを点数化する手法である. 今回, 「ありがとう作戦ゲーム」 を行うことにより, 母親は本児を叩かなくなり, 母親の子どもへの態度が変容し, 母子関係および本児の行動も改善した. 「ありがとう作戦ゲーム」 は, 母親と子どもの関係を改善し, 笑顔を増やす手法として有効であった.

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© 2019 一般社団法人日本小児神経学会
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