脳と発達
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症例報告
軽微な頭部外傷後にKlüver-Bucy症候群を来した小児の1例
大黒 春夏中山 智博白井 謙太朗渡辺 章充渡慶 次香代中山 純子中島 光太郎岩﨑 信明
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2020 年 52 巻 6 号 p. 403-407

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抄録

 Klüver-Bucy症候群 (KBS) は側頭葉障害によって精神的盲目や視覚失認, 視覚性過反応, 口唇傾向, 情動の変化, 過度な性的反応等の特徴的な症状を示す症候群である. 今回, 軽微な頭部外傷にもかかわらずKBSの症状を呈した小児を経験した. 症例は5歳の男児. 転倒による頭部打撲後に口唇傾向, 視覚刺激に対する極端な無反応, 易怒性の出現, 日常生活が遂行できなくなる失認や記憶障害, 情緒反応の欠如が認められた. 頭部MRIで異常所見はなかったが, 99mTc-ECD脳血流SPECT検査で両側小脳, 右側優位の両側頭葉・頭頂葉・視床・基底核の血流低下が, 脳波検査では左側頭部の徐波が認められた. 脳症として治療され第28病日頃に症状は軽快し, 徐波も症状の改善と合わせて消失した. 小児では急性脳炎脳症後にKBSを発症した報告は多いが, 頭部外傷に伴う発症例は殆ど報告されていない. 小児では頭部外傷後の脳症においても, KBSと考えられる経過を取る場合があるため注意が必要である. また, 頭部MRIに明らかな異常所見がない場合においても, 脳血流SPECTや脳波は障害部位の診断において有用である.

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© 2020 一般社団法人日本小児神経学会
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