2020 年 52 巻 6 号 p. 408-413
右眼瞼下垂を除いて明らかな周産期異常のない5歳の女児について報告する. 患者は6か月間の理学療法にもかかわらず支えなしで歩くことができなかったため, 2歳で当科に入院した. 遷延する右眼瞼下垂, 右眼外斜視, 高口蓋および鼻唇溝の左右差を認めた. 精神発達に遅れはなく, 言葉による指示を理解できたが, 3歳時に歩行獲得以降も跳躍は不可能で, 階段は左下肢から1段ずつ昇っており, 右優位の筋力低下が明らかになってきた. 血清CK値に異常はなく, 骨格筋CTで大臀筋の低吸収域, 骨格筋MRIで両側ヒラメ筋のT1高信号を認めた. 5歳時に家族の同意を得て右上腕二頭筋より筋生検を行い, 病理所見上中心核ミオパチーと診断された. さらに遺伝学的検査でmyotubularin 1 (MTM1) 遺伝子に既知のヘテロ接合性のミスセンス変異 (NM_000252.3 : c.721C>T [p.Arg241Cys]) が同定された. 同変異の症候性女性保因者は歩行獲得が遅く, 外見上の左右差があり, 眼瞼下垂と外眼筋麻痺, 左右差のある筋力低下が起きることが報告されている. 本邦ではこれまで症候性MTM1遺伝子変異保因者の報告はなかったが, 特に左右差を伴う筋疾患の診断の際には鑑別候補として注意すべきである.