脳と発達
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原著論文
聴覚過敏を持つ自閉スペクトラム症の児に対するイヤーマフの有効性と課題について
河野 千佳雨宮 馨小沢 愉理大澤 麻記中村 由紀子小沢 浩
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2022 年 54 巻 1 号 p. 39-45

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抄録

 【目的】神経発達症児における聴覚過敏に対するイヤーマフ (earmuffs, 以下EMs) の有効性と課題を検討する. 【方法】2015年12月から2016年10月の間, 当院療育外来通院中でEMsを使用している患者13人にアンケート調査を行った. 【結果】対象となった全例が自閉スペクトラム症 (autism spectrum disorder, 以下ASD) の診断を受け, 12人に知的障害, 1人にADHDの併存を認めた. EMsは約7割で毎日使用し, その過半数で1日8時間以上使用していた. EMsを使用した感想は69%が肯定的であったが, 76%で短所の指摘があった. こだわりや不安が生じたといった精神面への影響は31%, 汗疹, 外耳道炎といった合併症は23%に見られ, その使用頻度は全て毎日であった. 【結論】EMsは一般的に安全で簡便に使用でき, 聴覚過敏を持つASD児においてもQOLの改善が期待できる有効な手段であるが, ASD児においてはEMsに依存的になることで使用頻度が高くなる場合があり, 合併症が生じる可能性がある. 聴覚過敏を持つASD児にEMsを勧める際には適正使用に関する助言を行い, 適切に使用できているか注意深く観察していく必要がある.

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© 2022 一般社団法人日本小児神経学会
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