脳と発達
Online ISSN : 1884-7668
Print ISSN : 0029-0831
ISSN-L : 0029-0831
原著論文
小児在宅支援における親支援の重要性
―親子入院による小児在宅支援の取り組み(第2報)―
井上 大嗣森山 薫山下 未央里 龍晴松尾 光弘
著者情報
キーワード: 在宅支援, 親支援, 親子入院
ジャーナル フリー

2022 年 54 巻 3 号 p. 199-203

詳細
抄録

 【目的】長崎県立こども医療福祉センター(以下,当センターとする)では,小児の在宅支援を段階的に推進していくことを目的として,家族の希望に沿い1~2週間の親子同伴での入院(以下,親子入院とする)を約1~3か月の間隔で繰り返すという取り組みを行っている.親子入院の具体的な取り組みを紹介すると共に,親子入院の利用が親の意識に与える影響に関して調査する.【方法】2020年3月~2020年9月の期間に当センター親子入院を利用した患児の親,延べ59人を対象として,親子入院の入院時と退院時に,カナダ作業遂行測定(COPM),親の養育自信度の2つの指標を測定した.【結果】1回の親子入院で,入院時に設定した作業課題の遂行度・満足度の平均値の上昇,親の養育自信度の平均値の上昇(入院時平均3.75⇒退院時平均4.03」)を認めた.しかし,親子入院を繰り返しても,長期的には「子どもの受容」,「子どもへの対応」,「行動の理解」に関する養育自信度の平均値は上昇を認めなかった.【結論】親子入院は1~2週間の短い期間でも,COPMの親の遂行度・満足度,親の養育自信度を上昇させるが,長期的にはその影響は持続しにくいことが示唆された.発症・診断から時間を経過した後も,親は悩みや困難を抱えた不安定な状態にあり,小児の在宅支援においては,親支援の視点を意識して取り組んでいくことが重要であると考えられた.

著者関連情報
© 2022 一般社団法人日本小児神経学会
前の記事 次の記事
feedback
Top