脳と発達
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54 巻, 3 号
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巻頭言
総説
特集・第63回日本小児神経学会学術集会
<シンポジウム1:ADHDの周辺にある併存症について理解を深める>
  • 加賀 佳美
    2022 年 54 巻 3 号 p. 159-160
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー
  • 金生 由紀子
    2022 年 54 巻 3 号 p. 161-164
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー

     ADHDの併存症は,病因や病態の関連が想定される一次性併存症と,環境との相互作用で発症し得る二次性併存症に分けられる.不安,うつはADHDの二次性併存症とされる.低年齢でのADHD症状がその後の不安症状を予測する可能性が指摘されており,養育の影響も含めてさらに検討が必要である.Tourette症は他の発達障害と共にADHDの一次性併存症とされる.Tourette症を併存すると,ADHDのみよりもQOLが不良になるとされる.併存症を含めて患者を包括的に理解して治療・支援を行う必要がある.例えば,Tourette症の併存では,チックの改善や悪化が報告されているADHD治療薬のあることを考慮する.

  • 金村 英秋, 相原 正男
    2022 年 54 巻 3 号 p. 165-169
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー

     注意欠如・多動症(ADHD)ではてんかん性突発波(IED)を高頻度に認め,てんかん合併例が多く存在する一方,行動異常を呈する小児では,けいれん発作の有無如何によらず脳波上IEDを呈し,抗てんかん薬が症状の改善に有効な症例が一部存在する.

     ADHD/てんかん児の行動異常には前頭前野が関連し,高頻度のてんかん発作・高度脳波異常が前頭前野の成長障害を惹起し,ADHDと類似した行動障害をもたらす可能性が示唆されている.ADHDでは前頭部IEDとの関連が推察され,IEDの改善が行動改善へ繋げられる可能性から,ADHDとてんかん児における行動障害において病態としての共通の基盤が推察される.

  • 福水 道郎
    2022 年 54 巻 3 号 p. 170-175
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー

     注意欠如・多動症(ADHD)は側坐核,線条体,前頭葉などにおけるカテコラミンのみならずGABA,グルタミン酸神経系などの機能不全が病態の背景にあると言われ,様々な睡眠の問題を抱えている可能性がある.最近注目されている日中の過剰な眠気については,睡眠不足,起床困難といった睡眠習慣の問題や,不眠症,睡眠の質の異常,睡眠時随伴症,睡眠覚醒リズム障害,中枢性過眠症や睡眠関連呼吸障害などの睡眠-覚醒障害との関連にも注意する必要があるが,神経発達症に伴う独特な病態メカニズムによるものである可能性も高い.ADHDの病態に関連する睡眠–覚醒障害や睡眠習慣の問題と合併症とを各々鑑別し,それぞれに有効な対策をたてていく必要がある.

  • 加賀 佳美
    2022 年 54 巻 3 号 p. 176-179
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー

     神経発達症は,ADHD,自閉スペクトラム症(autistic spectrum disorder;ASD),限局性学習症(specific learning disorder;SLD)が代表的であるが,それぞれ重なり合って様々な病態を示すことが知られている.ADHDでは,30~40%にSLDを併存するといわれるが,その特徴や病態については明らかではない.そこでSLDとADHD併存の特徴を知るために,SLD 120名について単独群と併存群の2群に分け比較検討した.単独群では読字と書字両方の障害が強く,併存群では書字の障害が強い傾向を認めた.実行機能障害,ワーキングメモリの障害は併存群だけでなく,単独群でも伴っていた.それぞれの併存に目を向け,症例ごとにその病態を評価し,支援に生かしていくことが重要である.

<シンポジウム4:神経を見える化する画像技術の進歩>
  • 藤井 克則, 山中 岳
    2022 年 54 巻 3 号 p. 180
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー
  • 横田 元
    2022 年 54 巻 3 号 p. 181-185
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー

     MRIは電磁波の照射法を巧みに操作することで,組織の様々な物理量の差を可視化し,様々なコントラストの画像を得ることができる.また,単なる白黒画像だけでなく,組織固有の物理量を反映した定量値が得られるようになってきた.すなわち,MRIをバイオマーカーとして利用することが期待できるようになってきた.ただ,MRIをバイオマーカーとして利用するには様々な超えるべき課題があり,それに対する対処法も模索されている.本項では,①MRIの基本原理,②定量化技術,③バイオマーカーとして使用するための技術の3項目に分け,最近のMRIの見える化する技術について解説する.

  • 石山 昭彦
    2022 年 54 巻 3 号 p. 186-190
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー

     超音波検査は携帯性に優れ無侵襲であり,小児領域でも鎮静を要さずに検査を行うことも可能である.末梢神経の超音波検査では,遺伝性ニューロパチー,炎症性ニューロパチー,末梢神経腫瘍といった疾患に対する評価が行われる.神経超音波での評価指標は主に神経肥厚であり,断面積を測定し,その断面積が拡大する場合を神経肥厚と判断する.また線維束性筋収縮や不随意運動といった動的な評価も超音波検査でとらえることもできる.さらに筋疾患では,筋ジストロフィーや筋炎において筋線維の輝度変化を描出することで異常所見を見出せる.本シンポジウムでは実際の超音波検査の手技手法を概説し,小児の神経筋疾患の超音波検査画像の評価の注意点について述べていきたい.

  • 吉井 祥子, 藤井 克則
    2022 年 54 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー

     MR neurographyとはMRIを用いて末梢神経を選択的に描出する撮像法であり,広範囲かつ高コントラストで末梢神経形態の視覚的な観察を可能にする.MR neurographyにおける神経肥厚や信号異常は,末梢神経の病理学的変化を反映しており,慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy;CIDP)を始めとする末梢神経疾患の診断・鑑別や病態理解に貢献し得る.末梢神経疾患の新たな評価法として注目されるMR neurographyの臨床的有用性について報告する.

<国際化推進委員会主催セミナー>
原著論文
  • ―親子入院による小児在宅支援の取り組み(第2報)―
    井上 大嗣, 森山 薫, 山下 未央, 里 龍晴, 松尾 光弘
    2022 年 54 巻 3 号 p. 199-203
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー

     【目的】長崎県立こども医療福祉センター(以下,当センターとする)では,小児の在宅支援を段階的に推進していくことを目的として,家族の希望に沿い1~2週間の親子同伴での入院(以下,親子入院とする)を約1~3か月の間隔で繰り返すという取り組みを行っている.親子入院の具体的な取り組みを紹介すると共に,親子入院の利用が親の意識に与える影響に関して調査する.【方法】2020年3月~2020年9月の期間に当センター親子入院を利用した患児の親,延べ59人を対象として,親子入院の入院時と退院時に,カナダ作業遂行測定(COPM),親の養育自信度の2つの指標を測定した.【結果】1回の親子入院で,入院時に設定した作業課題の遂行度・満足度の平均値の上昇,親の養育自信度の平均値の上昇(入院時平均3.75⇒退院時平均4.03」)を認めた.しかし,親子入院を繰り返しても,長期的には「子どもの受容」,「子どもへの対応」,「行動の理解」に関する養育自信度の平均値は上昇を認めなかった.【結論】親子入院は1~2週間の短い期間でも,COPMの親の遂行度・満足度,親の養育自信度を上昇させるが,長期的にはその影響は持続しにくいことが示唆された.発症・診断から時間を経過した後も,親は悩みや困難を抱えた不安定な状態にあり,小児の在宅支援においては,親支援の視点を意識して取り組んでいくことが重要であると考えられた.

症例報告
  • 江間 達哉, 玉利 明信, 村上 智美, 奥村 良法, 松林 朋子
    2022 年 54 巻 3 号 p. 204-209
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/28
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     Guillain-Barré症候群(Guillain-Barré syndrome;GBS)では自律神経障害により可逆性脳血管れん縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome;RCVS)や心筋症などの重篤な疾患を合併する.症例は4歳女児で,下肢痛で発症し第7病日に意識障害とたこつぼ型心筋症による呼吸・循環不全をきたして人工呼吸器管理の上,当院に転院した.血管炎や脳脊髄炎を疑いステロイドパルス療法を開始したが,抜管後に四肢の筋力低下と感覚障害を認め,蛋白細胞解離と末梢神経伝導速度の低下からGBSと診断した.頭部MRIでは広範な脳梗塞を認めたが,MR Angiographyで可逆性の血管径の不整を認めたためRCVSと診断した.第16病日から免疫グロブリン大量療法を追加し,第47病日に歩行可能となり発症6か月で運動機能も病前まで改善した.心筋症やRCVSはGBSの発症早期に合併し,治療による合併予防は困難である.二次的な神経障害を防ぐため,早期の診断と自律神経障害に伴う急変を念頭においた慎重な観察が必要である.

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