2023 年 55 巻 1 号 p. 27-33
【目的】日本小児神経学会医療安全委員会は「小児頭部外傷時のCT撮影基準の提言・指針」(以下,提言)を作成し2019年に発表した.その後に医療法施行規則が改正され,小児頭部外傷のCT検査に関する診療報酬の加算要件が2020年に改訂された.今回,我々は医療現場における提言や加算要件の周知度と診断アルゴリズム活用の本邦の現状とそれに関わる要因について調査した.【方法】対象は本邦で小児頭部外傷診療にかかわる医師(計7,590名)とし,方法はWebアンケートとし,決定木分析とロジスティック回帰モデルで統計解析した.【結果】1,073件の回答を得た(回収率14.1%).回答者属性は男性75.2%,女性24.8%,診療科は小児科(65.6%),脳神経外科(19.0%),小児救急科(6.1%),小児外科(5.3%),放射線科(3.2%),その他(0.8%)であった.64.6%の医師が提言を認識しており,認識に関わる要因は診療科と職位であった(p<0.001).一方,加算要件を認識している医師は全体の14.5%でシステムとして導入できているのは内2/3であった.加算要件の認識に関わる要因および診断アルゴリズム活用ありは,診療した外傷例が6名/月より多数であることと所属病院種別(大学以外の臨床研修病院)であった(p<0.001).【結論】放射線被ばくを低減するため小児頭部外傷診療にCT検査の診断アルゴリズムを医療現場で活用すべきである.これまでの提言や加算要件では十分でなかったので,各種メディアを通じて診断アルゴリズムを医師に広く知らせることが必要である.