2023 年 55 巻 3 号 p. 212-216
GABRB3遺伝子は,γ-aminobutyric acid(GABA)A受容体のβ3サブユニットをコードし,その変異は発達性てんかん性脳症の原因となる.我々は,GABRB3遺伝子にNM_000814.5:c.778C>A:p.(Leu260Met)のde novo新規変異を認めた乳児期早期発症難治焦点てんかんの女児を初期から追跡し,特徴的な脳波像を認めた.生後2か月から多焦点起始の発作を発症し,遊走性焦点発作も稀に認めた.発作は難治に経過したが,臭化カリウム(KBr)が著効し,1歳3か月以降は現在4歳5か月に至るまで発作は抑制されている.発作抑制以前に停滞していた発達は,発作抑制後に進み,1歳7か月で独坐,2歳11か月で独立ができるようになった.脳波は,初期の投薬開始前から背景活動で持続性速波が出現し,次第に振幅や頻度を増し,発作が抑制された後も特徴的な異常脳波所見を示した.このような速波活動についてGABRB3関連てんかんで注目した報告はなく,GABA抑制系の機能障害との関係が推測された.また本症例はGABRB3関連てんかんでKBrの有効性を示した最初の報告である.これらの知見はGABRB3関連てんかんの脳波所見の蓄積や治療選択に寄与すると考える.