脳と発達
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症例報告
幼児期に神経・筋疾患と鑑別診断したCamurati-Engelmann病の2例
中井 理恵柳原 恵子桒山 良子池田 妙最上 友紀子西川 正則岡本 伸彦田村 太資道上 敏美鈴木 保宏
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2023 年 55 巻 3 号 p. 217-221

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抄録

 Camurati-Engelmann病(MIM:131300)はtransforming growth factor-β1TGFB1)遺伝子の機能獲得型バリアントにより生じる,骨皮質の肥厚と長管骨骨幹部の紡錘形肥大を特徴とする,稀な常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式の骨系統疾患である.症状は幼児期に筋力低下,動揺性歩行,易疲労性で発症し,青年期以後に四肢痛などの骨症状が出現する.今回,初診時に神経・筋疾患が疑われたが,Camurati-Engelmann病と幼児期に診断した2男児例を経験したので報告する.症例はいずれも周産期歴,歩行獲得までの粗大運動発達は正常.独歩開始(12と14か月)直後より動揺性歩行を認めていた.3歳健診でGowers徴候陽性を指摘され当院に紹介となった.血清CK値,筋電図検査は正常であったが,骨格筋のスクリーニング検査で行った画像検査(CT,MRI)で骨病変を認めた.下肢の単純X線写真で本疾患に特徴的な骨変化を認め,TGFB1遺伝子にミスセンスバリアント(NM_000660. 7:c. 652C>T[p. Arg218Cys],rs104894721)を同定し確定診断した.うち1例に3歳時からlosartanの投与を開始し,運動耐容能の改善を認めている.近位筋優位の筋力低下を認める小児症例においてはCamurati-Engelmann病が鑑別にあがる.筋力低下を認める小児において神経・筋疾患が特定できない場合は,骨病変の評価も行う目的で下肢の筋肉CT・MRI検査を考慮すべきである.

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© 2023 一般社団法人日本小児神経学会
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