脳と発達
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症例報告
神経発達症を合併したGNB4バリアントによる遺伝性運動感覚性ニューロパチーの1例
阿部 ちひろ森 雅人小橋 孝介平本 龍吾樋口 雄二郎橋口 昭大高嶋 博
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2023 年 55 巻 6 号 p. 448-451

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抄録

 遺伝性運動感覚性ニューロパチーの病因遺伝子は多数報告されているがその中でもGNB4バリアントの報告例は少なく,日本人での報告例は1家系のみである.我々は転びやすさと学習困難を主訴に精査され,GNB4バリアントを認めた遺伝性運動感覚性ニューロパチーの14歳女子を経験した.8歳時に終糸脂肪腫による脊髄係留症候群の診断で係留解除術が施行されたあとも転びやすさが改善せず,成績不振も認めていたため精査した.脳神経所見に特記事項はなかったが,前脛骨筋の筋力低下とS1領域の感覚低下を認めた.血液検査,頭部・脊髄MRI検査では異常はなかった.神経伝導検査では下肢優位の伝導速度低下を認めた.遺伝子検査でPMP22の重複・欠失は認めなかったが,Charcot-Marie-Tooth病病因遺伝子解析でGNB4バリアント(NM_021629.4:c.229G>A, p.Gly77Arg)をヘテロ接合性に認めた.データベースにも登録されていないde novoバリアントであり,両親に同バリアントは認めなかった.WISC-IVを行い,IQは知的境界域で指標間でばらつきがあり,特に知覚推理の値が低かった.GNB4バリアントの報告例は少なく神経発達症との関連の報告はないが,中枢神経症状にも関与している可能性もあり,更なる症例の蓄積が必要と考えられた.

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© 2023 一般社団法人日本小児神経学会
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