2025 年 57 巻 3 号 p. 176-181
サブプレート層は,胎児期の大脳の発達過程で一過性に出現し,脳形成に携わる.近年,自閉スペクトラム症などの神経精神疾患は,胎児期に起きた脳変容に起因するとも考えられており,胎児期の脳発達に関心が寄せられている.サブプレートが脳の形成において果たす重大な役割を踏まえると,サブプレートの変化が神経発達に影響を及ぼすことが想定される.しかしながら,サブプレートの臨床的な評価方法は未だ確立されていない.
ヒト早産児脳波の波形の一つに,delta brushがある.Brushは律動的な紡錘波様速波であり,修正28週頃から増え始めて32週付近で最も高頻度に見られるようになった後,40週にかけて減少しほとんど見られなくなっていく.Brushは自発的にも刺激誘発的にも出現し,脳形成に必要な神経活動であると認識されている.一方,動物実験からは,このbrushがサブプレートに関係した電気活動であると推定されている.目視でbrushを数えた既報の研究と私達の自動検出アルゴリズムでbrushを検出した検討からは,brushの消退遅延と幼児期早期の発達遅滞や自閉特性との関連が示唆されており,サブプレートやbrushが,適切な時期に発達し,また消失することが,正常な脳の形成には必要であると考えられる.Brushをサブプレートの間接的な指標として,今後ますます研究が発展し,神経精神疾患の病態解明や新たな治療法開発へと導く新たな知見がもたらされることだろう.