抄録
Primidone (PR) 持続投与による熱性けいれんの再発予防効果を, PRおよびPR由来のphenobarbital (PB) 両者の血中濃度面より検討し, 合わせてPRの体内挙動の一端についても検索した.
38.0℃ 以上の発熱に際して2回以上のけいれん発作の既往があり, PR15-20mg/kg/dayを単独で継続服用せしめ, 現在までに6-12ヵ月経過を観察し, この間38.5℃ 以上の発熱を認めた対象は, PR投与開始時年齢1才4ヵ月-6才の29例 (単純型15例, 複合型14例) である. このうち, 熱性けいれんの再発予防が可能なPB血中濃度16μg/ml以上のものはわずか3例にすぎず, PR血中濃度は4.9-18.9μg/mlであったが, 経過観察中熱性けいれんの再発をみたものは1例のみであった.
また, これらの対象群では, PR投与量 (mg/kg/day) 18.0±2.4, PR血中濃度 (μg/ml) 9.0±3.5, PR血中濃度 (μg/ml) /投与量 (mg/kg/day) ・比0.50±0.17, PB血中濃度11.5±4.6, PB血中濃度/PR投与量・比0.64±0.23, PB/PR血中濃度比1.4±0.5であった.以
上, (1) PRの常用量継続投与により, 熱性けいれんの再発予防が可能であるが, これにはPR自身が抗けいれん作用を有することが予測される. この際, 過動, 不穏, 不眠などPR持続投与を中止すべき副作用, ならびにPR血中濃度10-12μ9/ml以上を示すものにも, 眼球振盪, 運動失調, 静穏, 眠気および嗜眠などの中毒症状を認めない. (2) PR単独使用時には, 臨床上一般に行なわれるdiphenylhydantoinとの併用時に比べ, PR由来のPB血中濃度, あるいはPB/PR血中濃度・比が有意に低値を示す.