抄録
例の入院中の成人てんかん患者を対象に, 抗てんかん剤A. E. D. 血清濃度の連続反復測定を行ない, 測定値の動揺の度合いを検討した. 患者には研究の主旨を説明し, 同意を得た.服薬量, 服薬時間は正確に把握された. 早朝服薬の3時間後にまず5日間連続して採血し, さらに1ヵ月後, 2ヵ月後に各1回繰り返した. 測定されたA. E. D. は, diphenylhydantoin (PHT), phenobarbita1 (PB), primidone (PRM), carbamazepine (CBZ) の4剤で, それぞれ16例, 17例, 10例, 13例に投与された. 血清濃度測定は, 酵素免疫測定法により行なった.
結果: 体重あたりの投与量と血清濃度の相関係数は, 5日間連続測定時はPHT0. 6886, PB0. 7477, PRM0. 8065, CBZ0. 6363, 計7回測定時はPHT0. 6494, PB0. 6931, PRM0.6678, CBZ0.5770であり, 一応の相関は得られたが, 予想よりも低いものであり, 個体差の大きさが示唆された.
各症例の7回の測定値は, 同一人で思いの外大きい動揺を示した. 変動の度合いを検討するため, 各症例の7回の実測値の平均 (Mean) と標準偏差 (S. D.) からS. D./Mean (%) を求め, これを変異係数として変動の度合いを示す指標とした.変異係数の分布をみると, 測定値の動揺はPHTで大きく, PBで小さかった.各薬剤についての変動比の平均は, PHT31.4±16.7 (%), PB14.2±12.7 (%), PRM18.9±14.0 (%), CBZ22.5±19.5 (%) であった.
対象症例中3例で, 発作直後の血清濃度を測定することが出来た. その3例が示した計7回の発作後の測定値を検討した結果, うち5回で血清濃度の著明に低下している薬剤が見い出された.
このような測定値の動揺がもたらされる機序につき, 若干の考察を行なった.