脳と発達
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Sodium valproate継続投与による熱性けいれんの再発予防
その臨床薬理学的検討
皆川 公夫三浦 寿男加藤 譲金子 次雄須藤 芳正
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キーワード: 熱性けいれん
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1979 年 11 巻 6 号 p. 594-603

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抄録

各種抗けいれん剤継続投与による熱性けいれんの再発予防効果に関する臨床薬理学的研究の一環として, 投与方法の差異によるsodium valproate (VPA) の効果を血中濃度面より検討した.
対象は2回以上の熱性けいれんの既往がある患児中, VPA20-25mg/kg/dayを単独で, [I] 1日2回または [II] 1日3回に分服して継続服用させ, 現在までに6ヵ月-1年10カ月経過を観察し, この間38.5℃以上の発熱を認めた投薬開始時年齢7ヵ月-6才の100例である. [I] 群は単純型32例, 複合型29例の計61例, [II] 群は単純型22例, 複合型17例の計39例よりなる.
血中濃度測定はgas-liquid chromatographyにより, 初回は投薬開始後2-4週に施行し, 以後は約6ヵ月間隔で測定をくり返した.また, 個々の採血は朝服薬後2-4時間に行なった. [I] 群のVPA血中濃度は26.3-130.9μg/ml (Mean±SD: 77.5±23.7μg/ml), [II] 群は12.2-122.7μg/ml (Mean±SD: 69.2±25.6μg/ml) であった.これらの対象のうち経過観察期間中に熱性けいれんの再発をみたものは, [I] 群では61例中13例 (21.3%), [II] 群では39例中5例 (12.8%) であった.また, 個々のVPA血中濃度と熱性けいれんの再発の有無との関係をみると, [I] 群では血中濃度80μg/mlを境として再発率に有意の差を認め, 同レベル以上で再発をみたものは29例中1例 (3.4%) のみであった. [II] 群では再発例5例のうち4例が50μg/ml未満の低血中濃度を示した.
また, 4ヵ月-2才1ヵ月の乳幼児10例を対象とし, 各5例にVPA20mg/kg/dayを1日2回または3回に分服して継続投与し, steady stateに至った後, 血中濃度の日内変動を検討した.VPAは投与開始後2-5日で血中濃度がsteady stateに達するが, steady stateのもとでも著明な血中濃度の日内変動を認める.とくに2分服の際に血中濃度の動揺が著しいが, 朝服薬直前のminimum levelは2分服, 3分服の両時ほぼ同値であった.

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© 日本小児小児神経学会
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